見えないものを見る 第7話 フェースを開く本当の目的は何か

前回は、番手が変わると、

  • ロフト
  • クラブ長
  • アタックアングル
  • バンス
  • ソール形状

が一つの組み合わせとして働き、適正なコンタクト状態を作っている可能性を考えました。

ロングアイアンでは、ロフトが小さく、アタックアングルは比較的浅く、バンスも小さい。

ショートアイアンやウェッジでは、ロフトが大きく、アタックアングルは深くなり、バンスも大きくなる。

これらは、それぞれ別の数字として存在しているのではありません。

ボールとクラブがどの高さで、どの位置に、どの姿勢で接触するか。

その接触状態を整えるために、一つの系として組み合わされている可能性があります。

では、アプローチでフェースを開く操作は、この中でどのような意味を持つのでしょうか。

一般には、

フェースを開くのは、ロフトを増やしてボールを高く上げるため

と説明されます。

もちろん、フェースを開けばロフトは増えます。

しかし、変わるのはロフトだけではありません。

フェースを開くと、

  • リーディングエッジの向き
  • リーディングエッジの高さ
  • 実効バンス
  • ソールの接地点
  • ヘッドの沈み込み
  • フェース上の打点
  • ボール側のコンタクトポイント

まで、すべてが同時に変化します。

そう考えると、フェースを開く操作を、単なるロフト調整として説明するだけでは足りないように思えます。

今回は、

フェースを開く本当の目的は、ボールを高く上げることではなく、ライに対して適正なコンタクトポイントを作ることではないか

という視点から考えていきます。

ライが変われば、ボールの高さも変わる

ゴルフボールは、いつも同じ高さにあるわけではありません。

練習マットでは、ボールの底はほぼ一定の高さにあります。

しかし、実際のコースでは、

  • 芝が薄い
  • 芝の上に少し浮いている
  • 柔らかい地面に沈んでいる
  • ラフの上に浮いている
  • 芝の間に深く沈んでいる

など、ライによってボール中心の高さが変わります。

さらに、ボールの高さだけでなく、クラブヘッドが地面へどの程度入るかも変わります。

 

硬い地面では、ソールは沈みにくい。

柔らかい芝では、ヘッドは深く入りやすい。

ラフでは、ヘッドとボールの間に芝が入りやすい。

つまり、実際の打点を決めるのは、

ボールがどれだけ高く支持されているか

だけではありません。

クラブヘッドがどれだけ地面へ入り、どの高さを通過したか

との相対関係によって決まります。

同じクラブ、同じスイング、同じアタックアングルでも、ライが変われば、ボールとフェースの位置関係は変わります。

スクエアフェースでは合わないライがある

ボールが適度に浮いたライを考えます。

フェースをスクエアにしたまま、通常どおりヘッドを地面へ入れると、クラブヘッドはボールに対して低い位置を通過する可能性があります。

すると、フェース上ではボールが高い位置へ当たりやすくなります。

反対に、ボールが沈んだライでは、同じようにソールを使うと、リーディングエッジがボールの下へ入りにくくなることがあります。

つまり、ライが変わると、

ボールの高さと、フェースが通る高さが一致しなくなる

ことがあります。

ここでフェースを開く操作が必要になります。

フェースを開くと、クラブの接地の仕方が変わります。

ソールのどこが地面へ触れるのか。

バンスがどの方向へ働くのか。

リーディングエッジがどの高さを通るのか。

それらを変えることで、ライに対するヘッドの通過高さを調整できるからです。

フェースを開くと、リーディングエッジの高さが変わる

ウェッジをスクエアに置いた状態からフェースを開くと、一般にリーディングエッジは地面から高くなります。

同時に、ソール後方やヒール側が接地しやすくなり、実効バンスも増えます。

このとき、ヘッドは地面へ深く潜りにくくなります。

つまり、フェースを開くことで、

  • リーディングエッジが上がる
  • ソールの接地点が変わる
  • バンスによる支持が強くなる
  • ヘッドの通過位置が高くなる

という変化が起こります。

これを単に「ロフトが増えた」とだけ説明すると、重要な部分が抜け落ちます。

フェースを開くことは、

クラブヘッドが地面に対して、どの高さを通るかを調整する操作

でもあるのです。

ボールが浮いたライでは、なぜ開くのか

ボールが芝の上に少し浮いている場合、ボール中心は通常より高い位置にあります。

このとき、スクエアフェースのままヘッドを低く入れると、フェース上部でボールを受けやすくなります。

フェース上部での接触は、

  • ボール初速の低下
  • スピン量の低下
  • 打ち出しの不安定化
  • 芝の介在

につながる可能性があります。

そこでフェースを開きます。

フェースを開くことで、バンスが地面からヘッドを支え、ヘッドの沈み込みを抑えます。

同時に、リーディングエッジの通過高さが上がります。

その結果、浮いたボールに対して、フェース下部の適正な位置を合わせやすくなります。

つまり、ボールが浮いたライでフェースを開くのは、

高い球を打ちたいから

という以前に、

高い位置にあるボールへ、クラブの接触位置を合わせるため

と考えることができます。

球が高く上がるのは、その操作に伴ってロフトが増えた結果でもあります。

ボールが沈んだライでは、開きすぎてはいけない

反対に、ボールが芝の中へ沈んでいる場合を考えます。

このときボールは低い位置にあります。

フェースを大きく開くと、

  • リーディングエッジが高くなる
  • バンスが強く働く
  • ヘッドが地面へ入りにくくなる

ため、ボールの下へクラブを届かせにくくなることがあります。

そのため、沈んだライでは、

  • フェースを開きすぎない
  • リーディングエッジを低く使う
  • バンスを減らす
  • より深いアタックアングルを使う

といった対応が必要になります。

つまり、フェースを開くことが常に正解なのではありません。

ライに対して、

ボールの高さとクラブの通過高さを一致させる

ことが目的です。

フェース開度は、そのための調整手段の一つです。

フェースを開くと、ボール側のコンタクトポイントも変わる

フェースを開けば、フェース面の向きが変わります。

ボールを球体として考えると、フェース開度は経度を変えます。

同時に、ロフトが増えることで、コンタクトポイントはより下側の緯度へ移ります。

つまり、フェースを開くと、

  • 左右方向の位置
  • 上下方向の位置

の両方が変化します。

ここで重要なのは、フェース開度が大きくなっても、ロフトが増えることで、左右方向の実距離は必ずしも大きくならないことです。

以前考えたように、球面上では南極に近づくほど、同じ経度差でも左右方向の距離は小さくなります。

したがって、フェースを開く操作は、

フェースを右へ向ける操作

であると同時に、

コンタクトポイントをボール下部へ移し、左右方向への作用腕を小さくする操作

とも考えられます。

高ロフトのアプローチでフェースを大きく開いても、想像するほど右へ飛び出さないことがあるのは、この構造と関係している可能性があります。

リーディングエッジそのものを当てるのか

ここで「リーディングエッジをボールへ合わせる」という表現には注意が必要です。

リーディングエッジそのものがボールへ衝突すれば、トップやブレードショットに近づきます。

理想は、エッジそのものを当てることではありません。

リーディングエッジ直上のフェース下部を、ボールの適正な位置へ合わせる

ことです。

ウェッジで強いスピンがかかるとき、フェース中央よりもやや下部、下から数本目の溝付近で接触していることがあります。

そこでは、

  • ボールを十分に圧縮できる
  • フェース面との接触を保てる
  • 芝や水分の介在を抑えやすい
  • ボールカバーへ接線方向の力を伝えやすい

という条件が作られます。

フェースを開く操作は、この低い適正打点へ、ヘッドの通過位置を合わせる役割を持つ可能性があります。

バンスがヘッドを支える

フェースを開くと、実効バンスが大きくなります。

バンスは地面から反力を受け、ヘッドが深く潜りすぎるのを防ぎます。

その結果、

  • フェースの通過高さが安定する
  • リーディングエッジが急激に下がらない
  • ヘッド姿勢が大きく変化しにくい
  • ボールとの接触位置が揃いやすい

という状態を作れます。

つまり、バンスは単にダフリを防ぐのではありません。

フェース下部の適正な打点を、ボールへ通すためにヘッドを支持する

機能を持っていると考えられます。

この見方をすると、フェースを開くこととバンスを使うことは、別々の技術ではありません。

フェースを開くことでバンスの働き方を変え、バンスによってクラブの通過高さを調整し、ボールとのコンタクトポイントを合わせる。

一連の操作として理解できます。

フェースを開くのは、ロフトを増やすためなのか

ここまで考えると、従来の説明に一つの問いが生まれます。

フェースを開くからロフトが増え、ボールが高く上がる。

これは結果として正しい。

しかし、プレーヤーが本当に行っていることは、

ロフトを増やすこと

なのでしょうか。

それとも、

ライに対して、クラブヘッドの通過高さ、バンスの接地、フェース下部の打点を調整すること

なのでしょうか。

もし後者だとすれば、ロフトの増加は主目的ではありません。

適正なコンタクト位置を作るためにフェースを開いた結果、ロフトも増えているという順序になります。

これは、見えているクラブ側の変化と、見えていないボール側の目的を入れ替えて考えることです。

見えているのは、フェースが開いたことです。

見えていないのは、その操作によって、ボールとクラブの接触位置が整えられたことです。

フェースを開けば、スピンが増えるのか

一般には、フェースを開くとロフトが増え、スピンが増えると説明されます。

しかし、実際にはフェースを開けば、必ずスピンが増えるわけではありません。

開きすぎれば、

  • ボールがフェース上を滑る
  • 接触圧力が不足する
  • ボールスピードが落ちる
  • 打点が高くなる
  • 芝や水分が介在する

ことで、スピンが減ることもあります。

したがって、スピンを増やすのはフェース開度そのものではありません。

フェースを開くことで、

  • 適正な低い打点へ合わせる
  • バンスでヘッドを支持する
  • ボールとフェースをクリーンに接触させる
  • カバーへ十分な圧力とせん断を与える

という条件が作られたとき、スピン効率が高まると考える方が自然です。

つまり、

フェースを開くことがスピンを作るのではない。
フェースを開くことで、スピンを作りやすい接触状態を作っている。

ということです。

ロフト中心の説明から、コンタクト中心の説明へ

フェースを開くという動作をクラブ側から見れば、

  • フェース向きが変わる
  • ロフトが増える
  • バンスが増える

と説明できます。

しかし、ボール側から見れば、

  • コンタクトポイントが移る
  • クラブの通過高さが変わる
  • 接触圧力が変わる
  • カバーの変形方向が変わる
  • 力積の作用位置が変わる

という現象が起きています。

どちらも同じインパクトを見ています。

ただし、見ている中心が違います。

クラブ中心に見れば、フェースを開いてロフトを増やした。

ボール中心に見れば、ライに対して適正な接触位置を作った。

どちらがプレーヤーの目的をより正確に表しているのでしょうか。

見えるフェース開度と、見えない接触の調整

現在の弾道計測器では、フェースが何度開いていたかを測ることができます。

しかし、その開度によって、

  • リーディングエッジが何ミリ上がったか
  • ソールのどこが地面へ接触したか
  • ヘッドがどれだけ沈み込んだか
  • ボールのどこへ接触したか
  • フェースのどの高さでボールを受けたか

までを、常に正確に表示できるわけではありません。

見えているのはフェース開度です。

見えていないのは、その開度を使って何を調整したかです。

しかし、ライ、バンス、打点、ボールの変形を合わせて考えれば、フェースを開く目的が少し違って見えてきます。

フェースを開くのは、単に球を高く上げるためではない。

ボールの高さに対して、クラブのコンタクト位置を合わせるため

ではないでしょうか。

次回は、その接触によってスピンがどのように生まれるのかを考えます。

スピンは、本当に摩擦だけで説明できるのでしょうか。

フェースとボールが接触する短い時間の中で、ボールカバーはどのように変形し、どの方向の力積を受け取り、離脱後の回転へ変えているのでしょうか。

見えないものを見る 第6話 番手が変わると、なぜアタックアングルとバンスも変わるのか

前回は、ダウンブローになることで、ボールへ力を加える方向と実効的な作用位置が変わり、方向性が安定する可能性を考えました。

プロがグリーンを狙う場面では、最大飛距離を求めたフルショットよりも、右手首の角度を保ち、適正なダウンブローでラインを出すショットが多く見られます。

その理由は、単にスピンを増やすためではありません。

ボールへ力を加える位置と方向を揃え、左右方向と縦距離の両方を安定させるためではないか。

それが前回までの考察でした。

では、クラブの番手が変わると、なぜアタックアングルも変わるのでしょうか。

ロングアイアンでは比較的浅く入り、ショートアイアンやウェッジでは、より深いダウンブローになる傾向があります。

同時に、クラブのロフトは増え、バンスも大きくなっていきます。

これは偶然なのでしょうか。

今回は、ロフト、アタックアングル、バンスの関係を、ボールとの接触から考えてみます。

円の接線という中学校の数学

まず、中学校で習う円の基本性質を思い出します。

円の中心から接点へ引いた半径は、その接点における接線と必ず垂直になります。

円の中心を O、接点を P、接線を l とすれば、

OP丄 l

です。

これは、ゴルフボールとクラブフェースの関係を考えるうえで、非常に重要な性質です。

ゴルフボールを完全な球体、クラブフェースを平面として考えると、最初に接触する瞬間には、

  • クラブフェースはボール球面に対する接平面
  • ボール中心から接触点へ向かう半径は、フェース面に垂直
  • その半径方向がフェースの法線方向

になります。

つまり、クラブフェースの向きが決まれば、球面上の幾何学的なコンタクトポイントも決まります。

フェース開度が経度を決め、ロフトが緯度を決めるという前回までの説明は、この接線の性質を土台にしています。

ロフトが変われば、ボール側の接触位置も変わる

ロフトの小さいクラブでは、フェースは比較的立っています。

そのため、ボール中心から接点へ向かう半径は、地面に対して比較的水平に近くなります。

地球に例えれば、コンタクトポイントは赤道に近い位置です。

一方、ロフトが大きくなると、フェースは上を向きます。

フェース面に垂直な半径も下向きに傾くため、ボール側のコンタクトポイントは、より下側へ移ります。

地球に例えれば、南極に近づいていくことになります。

したがって、

ロフトが増えるほど、クラブフェースはボールの下側へ接触する

という関係が生まれます。

これは、ロフトがボールを高く上げるという結果だけではなく、ボール球面上のどこへ接触するかを決めているということです。

ボール側の接触点と、フェース側の打点は別である

ここで、二つの打点を分ける必要があります。

一つは、ボール球面上のどこへ接触したかという、ボール側のコンタクトポイントです。

もう一つは、クラブフェースのどの高さでボールを受けたかという、フェース側の打点です。

この二つは関連しますが、同じものではありません。

同じロフトのクラブでも、

  • ヘッドが高い位置を通過した
  • ヘッドが深く地面へ入った
  • リーディングエッジが浮いた
  • バンスが地面に強く接触した

という違いによって、フェース上の打点は変わります。

したがって、ロフトが大きいから必ずフェース下部へ当たるとは限りません。

フェース側の打点を決めるには、クラブヘッドがどの高さを通過し、地面からどのような反力を受けたかまで考える必要があります。

番手が短くなるほど、アタックアングルは深くなる

一般に、ロングアイアンでは比較的浅いダウンブローになります。

ショートアイアンやウェッジになるほど、アタックアングルは深くなる傾向があります。

しかし、プロが番手ごとにまったく別の打ち方をしているわけではありません。

番手が短くなると、

  • シャフトが短くなる
  • ボール位置が中央寄りになる
  • スイング円の最下点に対するボール位置が変わる
  • ロフトが大きくなる

ため、同じスイング構造の中でも、インパクト時の進入角は自然に深くなります。

つまり、番手別のアタックアングルは、

番手ごとに意識して打ち込んだ結果

というより、

クラブ長とボール位置が変化した結果

として生まれている部分が大きいと考えられます。

ロフトが増えるのに、アタックアングルも深くなる

ここで、一見すると矛盾する関係が現れます。

ロフトが大きくなると、ボール側のコンタクトポイントは下へ移ります。

それに加えて、アタックアングルも深くなれば、クラブヘッドはさらに下方向へ進みます。

そのままなら、ショートアイアンやウェッジでは、

  • リーディングエッジが地面へ深く刺さる
  • フェース下部すぎる位置でボールを受ける
  • ヘッドが急減速する

ように見えます。

しかし、実際にはそうならないように、もう一つの構造が用意されています。

それがバンスです。

バンスは何をしているのか

バンスとは、リーディングエッジよりもソール後方が低く配置されている構造です。

一般には、

バンスはダフリを防ぐもの

と説明されます。

これは間違いではありません。

しかし、ダフリを防ぐという説明だけでは、バンスの役割を十分に表していません。

バンスが地面や芝へ接触すると、地面から反力を受けます。

その反力によって、

  • ヘッドが地面へ潜りすぎるのを防ぐ
  • リーディングエッジの通過高さを保つ
  • フェース姿勢を安定させる
  • ヘッドの急激な減速を抑える

ことができます。

つまり、バンスは、

ヘッドを跳ねさせるためのもの

ではなく、

ヘッドの侵入深さと通過高さを管理する支持機構

と考えることができます。

アタックアングルとバンスは反対方向に働く

ダウンブローが深くなるほど、クラブヘッドは地面へ深く入ろうとします。

一方、バンスが大きくなるほど、ソールは地面から強い反力を受けやすくなり、ヘッドの潜り込みを抑えます。

つまり、

  • アタックアングルはヘッドを下へ向かわせる
  • バンスはヘッドを地面から支える

という、反対方向の作用を持っています。

この二つが適切に組み合わされれば、

ダウンブローで入っても、ヘッドは必要以上に潜らず、適正な高さを通過する

ことができます。

番手が短くなるほどアタックアングルが深くなり、同時にバンスも大きくなる傾向があるのは、両者が一つの組み合わせとして働いているからではないでしょうか。

数字が完全に相殺されるわけではない

ここで注意したいのは、

アタックアングルが5度なら、バンスも5度あれば相殺される

という単純な話ではないことです。

実際のソールと地面の関係には、

  • シャフトの傾き
  • ダイナミックロフト
  • ソール幅
  • ソールの丸み
  • リーディングエッジの形状
  • 地面の硬さ
  • 芝の密度
  • ヘッドスピード

が影響します。

バンス角は、一つの静的な設計値です。

一方、インパクトではクラブ姿勢と地面条件によって、実際に働く実効バンスが変わります。

したがって、アタックアングルとバンスは、数値として単純に引き算するものではありません。

それでも、

深い進入に対して、バンスが地面からヘッドを支持する

という基本的な役割は変わりません。

番手ごとの組み合わせ

ロングアイアンは、

  • ロフトが小さい
  • クラブが長い
  • アタックアングルが浅い
  • バンスが比較的小さい

という組み合わせです。

フェースが立っているため、ボール側のコンタクトポイントは赤道に近くなります。

アタックアングルも浅いため、大きなバンスによる支持を必要としません。

一方、ショートアイアンやウェッジは、

  • ロフトが大きい
  • クラブが短い
  • アタックアングルが深い
  • バンスが大きい

という組み合わせです。

フェースはボールの下側へ接触します。

クラブヘッドも深い角度で地面へ向かいます。

そこでバンスが地面からヘッドを支え、リーディングエッジの通過高さを整えます。

このように見ると、番手ごとの設計は、

ロフト、長さ、アタックアングル、バンスが別々に存在している

のではなく、

適正なコンタクト状態を作るために、一つの系として組み合わされている

ことが分かります。

芝の上ではボールも動いている

さらに、実際のゴルフでは、ボールは完全に地面へ接しているとは限りません。

フェアウェイの芝は、ボールを数ミリ持ち上げています。

薄いライでは地面に近く、芝の上に浮いたライでは、ボール中心はより高い位置にあります。

一方、クラブヘッドも芝や地面へ入ります。

したがって、フェース上の打点を決めるのは、

  • ボールが地面からどれだけ高く支持されているか
  • クラブヘッドが地面へどれだけ入るか

の差です。

ボールが高く浮いていても、ヘッドが同じだけ深く入れば、打点は大きく変わりません。

しかし、バンスによってヘッドの沈み込みが抑えられれば、フェース上の打点は高くなります。

反対に、硬い地面でバンスが強く反発すれば、リーディングエッジが浮き、ボール下部を薄く捉える可能性もあります。

つまり、ライが変わると、

ボールの高さとヘッドの通過高さの関係

が変わります。

適正な打点を揃えるための設計

クラブ設計者が番手ごとに変えているのは、ロフトと長さだけではありません。

  • バンス
  • ソール幅
  • ソールの丸み
  • リーディングエッジ形状
  • ヘッド重心
  • フェース高さ

まで調整されています。

これらは、番手ごとに異なる進入条件でも、フェースの適正な位置でボールを受けるための設計と考えることができます。

ロングアイアンとウェッジでは、クラブの動きも、ボール側の接触位置も異なります。

それでも、極端に打点が上下しないように、クラブ側の形状が整えられているのです。

つまり、

番手が変わるから打点が変わる

だけではなく、

番手が変わっても適正な打点を維持するために、クラブ設計が変えられている

と考える方が自然です。

バンスはインパクトを支えるサスペンションなのか

自動車では、エンジンの力がそのまま路面へ伝わるわけではありません。

シャシー、サスペンション、タイヤを通じて、路面へ力が伝えられます。

サスペンションは、車体を上下に動かすためだけのものではありません。

タイヤの接地を保ち、路面へ安定して力を伝えるための装置です。

ゴルフクラブにおけるバンスにも、似た役割があるのかもしれません。

バンスは、ヘッドを地面から支え、

  • フェースの通過高さ
  • ヘッドの姿勢
  • ボールとの接触状態

を安定させます。

そう考えると、バンスは単なるダフリ防止機能ではありません。

クラブフェースとボールの接触を支えるサスペンション

と表現することもできます。

フェースを開く意味へつながる

ここまで考えると、アプローチでフェースを開く意味も変わって見えてきます。

一般には、

フェースを開くのは、ロフトを増やしてボールを高く上げるため

と説明されます。

しかし、フェースを開けば、ロフトだけでなく、

  • バンスの向き
  • ソールの接地点
  • リーディングエッジの高さ
  • ヘッドの侵入深さ
  • ボール側のコンタクトポイント
  • フェース上の打点

も同時に変わります。

そうであれば、フェースを開く主な目的は、

ロフトを増やすこと

ではなく、

ライとアタックアングルに対して、適正なコンタクト位置を作ること

なのかもしれません。

ロフトが増えるのは、その操作に伴って起きる結果の一つにすぎない可能性があります。

見えるロフトと、見えない組み合わせ

私たちは、クラブを見ればロフトを確認できます。

弾道計測器を使えば、アタックアングルも確認できます。

カタログを見れば、バンス角も分かります。

しかし、それらがインパクトでどのように組み合わされ、

  • リーディングエッジがどの高さを通過したか
  • ソールがどこで地面に接触したか
  • ボールのどこへ力が加わったか
  • フェースのどこでボールを受けたか

までは、直接には見えません。

見えている数値は、それぞれ独立しているように見えます。

しかし、実際のインパクトでは、すべてが一つの接触状態を作っています。

番手が変われば、ロフトが変わる。

クラブ長が変わり、アタックアングルも変わる。

その進入角に対応するように、バンスとソール形状も変わる。

それらすべてが、適正な打点とボール出力を作るために組み合わされているのではないでしょうか。

次回は、フェースを開く操作を、単にロフトを増やす動作としてではなく、

ボールとフェースのコンタクトポイントをライに合わせて調整する動作

として考えていきます。

見えないものを見る 第5話 ダウンブローになると、なぜ方向性が安定するのか

前回は、ロフトが大きくなるほどバックスピン成分が強くなり、同じ横方向の回転成分があっても、スピンアクシスの傾きが小さくなることを考えました。

ロフトが大きいクラブでは、

  • 左右方向のコンタクト偏位が小さくなりやすい
  • 横方向のトルクが小さくなりやすい
  • バックスピン成分が大きくなる
  • スピンアクシスが傾きにくくなる

という複数の条件が重なります。

では、クラブのロフトではなく、クラブヘッドがボールへ入ってくる方向が変わると、何が起きるのでしょうか。

グリーンを狙う場面で、プロは必ずしも最大飛距離を求めたフルショットを行いません。

スイング幅を抑え、右手首の角度を保ちながら、いわゆる「ラインを出す」ショットを選ぶことがあります。

そのとき、インパクトロフトは抑えられ、クラブヘッドは適正なダウンブローでボールへ入ります。

プロがこの打ち方を選ぶのは、経験的に、打ち出し方向と縦距離の両方を管理しやすいことを知っているからでしょう。

では、なぜダウンブローで捉えると、方向性が安定するのでしょうか。

今回は、アタックアングルについて考えます。

アタックアングルとは何か

アタックアングルとは、インパクト付近でクラブヘッドがどの方向へ進んでいるかを、上下方向の角度として表したものです。

地面に対して水平に近く進めば、アタックアングルは浅くなります。

目標方向へ進みながら、より強く下方向へ向かえば、ダウンブローが深くなります。

ここで大切なのは、目標方向そのものが変わるのではなく、クラブヘッドの進み方が変わるということです。

ダウンブローが深くなるほど、クラブは単に前へ進むのではなく、前へ進みながら、より下方向へ向かってボールへ入ってきます。

見えているのは、クラブが下へ進んでいる動きです。

しかし、ボール側から見て重要なのは、その下向きの進行によって、ボールのどの位置へ、どの方向の力が加わったのか、という点です。

最初の接触点と、力が作用した中心は同じではない

完全な球体と平面が最初に触れる一点だけを考えれば、その位置は主にフェースの向きによって決まります。

そのため、アタックアングルだけを変え、フェースの向きをまったく変えないなら、最初に触れる一点が必ず下へ動くとは限りません。

しかし、実際のゴルフボールはインパクトで大きく変形します。

接触は一点で終わるのではなく、時間とともに面へ広がります。

その接触面の中では、

  • 圧力が高くかかる場所
  • 摩擦が強く働く場所
  • ボールカバーが大きく変形する場所
  • 力が集中的に伝わる中心

が存在します。

ここでは、この「力が集中的に伝わる中心」を実効コンタクトポイントと考えます。

今回の考え方は、ダウンブローになると、球面上の最初の接触点が必ず下へ動くという意味ではありません。

そうではなく、ボールが変形して接触面が広がる過程の中で、圧力や力の中心が下方へ移るのではないか、という考えです。

クラブの進行方向が下へ傾けば、接触面の中での圧力分布や、摩擦の働き方も変わるはずです。

その結果、ボールが最終的に受け取る力の中心は、より下方へ移る可能性があります。

地球の経度・緯度で考える

ボールを地球のような球体として考えます。

フェース開度は経度、ロフトや上下方向の作用位置は緯度に相当します。

赤道付近では、同じ10度の経度差でも、左右方向の距離は大きくなります。

一方、南極へ近づくほど、同じ10度の経度差でも、左右方向の距離は小さくなります。

もしダウンブローが深くなることで、実効コンタクトポイントがボール下部へ移るなら、同じフェース開度であっても、ボール重心から見た左右方向の作用腕は短くなります。

つまり、フェース向きの誤差が同じでも、作用位置が下がるほど、左右方向への影響は小さくなると考えられます。

左右方向の作用腕と方向性

ボールが左右へ向きを変えるかどうかは、どれだけ目標方向へ力が加わったかだけではなく、その力がボール中心からどれだけ左右にずれた位置へ加わったかにも関係します。

同じ強さで前へ押されたとしても、その力がボール中心から左右へ大きくずれた位置にかかれば、ボールは前へ飛ぶだけでなく、左右へ向きを変えようとする回転も受けやすくなります。

逆に、同じように前へ押されても、その力がより中心に近い位置へかかれば、左右へ向きを変えようとする作用は小さくなります。

ここで重要なのが、左右方向の作用腕です。

実効コンタクトポイントが下方へ移ると、同じフェース向きの誤差があったとしても、その誤差が左右方向へ及ぼす影響は小さくなります。

つまり、ダウンブローになるほど、同じフェース誤差が左右方向の回転や方向変化として現れにくくなる可能性があります。

プロがピンを狙うときにダウンブローを使う理由

プロゴルファーは、ピンを狙うショットで、払い打つよりも、適正なダウンブローでボールを捉えることがあります。

一般には、

  • ボールを圧縮するため
  • スピンを増やすため
  • ターフを取るため
  • ロフトを立てて距離を管理するため

と説明されます。

もちろん、これらも無関係ではありません。

しかし、プロが求めているのは最大飛距離ではありません。

ピンを狙う場面で必要なのは、

  • ボールスピードを揃える
  • 打ち出し角を揃える
  • スピン量を揃える
  • 左右の方向を揃える
  • キャリーを揃える

ことです。

プロは経験的に、クラブを適正なダウンブローで入れた方が、ボールの出力を安定させやすいことを知っています。

その理由の一つとして、

実効コンタクトポイントがボール下部へ安定し、左右方向の作用腕が短くなるため、方向への感度が下がる

という構造が考えられます。

プロが「ラインを出す」と表現する打ち方は、単に低い球を打つことではないのでしょう。

フェースの開閉量を抑え、インパクトロフトと打点を管理し、ボールへ力を加える位置と方向を揃える。

その結果として、打ち出し方向と縦距離の再現性が上がると考えられます。

ダウンブローはスピンを増やすためだけではない

アタックアングルを語るとき、多くの説明はスピンロフトへ向かいます。

ダウンブローが深くなると、ダイナミックロフトとの差が広がり、その結果としてスピン量が増える、という説明です。

これはクラブ側の角度関係としては有用です。

しかし、ボール側から見ると、それだけではありません。

アタックアングルが変われば、

  • ボールへ向かう進入方向
  • 接触面の圧力分布
  • ボールカバーの変形方向
  • 力が作用する位置
  • 左右方向の作用腕

も変わります。

したがって、ダウンブローは、

スピン量を変える操作

であると同時に、

ボールへ力を加える位置と方向を変える操作

でもあります。

この後者を考えなければ、プロが方向性を求める場面でダウンブローを使う理由は、十分には説明できません。

方向性とは左右だけではない

プロが求める方向性は、単にボールが右へ行くか、左へ行くかだけではありません。

ピンを狙うショットでは、

  • 左右のばらつき
  • キャリーの前後差
  • 打ち出し高さ
  • スピン量
  • ランディング角

まで含めて、狙った空間へボールを運ぶ必要があります。

適正なダウンブローで打点とインパクトロフトが揃えば、

  • ボールスピード
  • 打ち出し角
  • スピン量
  • スピンアクシス

も揃いやすくなります。

その結果、左右方向だけでなく、縦距離も安定します。

つまり、プロが求めている方向性とは、

二次元の直進性ではなく、三次元空間における弾道の再現性

です。

深ければ深いほどよいわけではない

ただし、アタックアングルが深いほど、無条件に方向性がよくなるわけではありません。

過度に深くなれば、

  • フェース下部すぎる打点
  • ボールスピードの低下
  • スピン過多
  • リーディングエッジの刺さり
  • ヘッドの急減速
  • ターフや芝の介在
  • 距離のばらつき

が起こります。

必要なのは、最大のダウンブローではありません。

番手、ロフト、バンス、ライに対して適正なアタックアングル

です。

プロが行っているのは、ただ上から打ち込むことではありません。

クラブとボールが最も安定して結合する進入条件を作っているのです。

アタックアングルは原因なのか、入力条件なのか

弾道計測器には、アタックアングルが何度だったか表示されます。

しかし、その角度が直接ボールを真っすぐ飛ばしたわけではありません。

ボールが受け取ったのは、

  • 接触位置
  • 圧力分布
  • 力の向き
  • 力の大きさ
  • 回転の受け取り方

です。

アタックアングルは、それらを作るクラブ側の入力条件です。

したがって、

ダウンブローだから方向性がよい

というより、

ダウンブローによって、方向性が安定しやすい接触条件が作られた

と考えた方が正確です。

見える進入角と、見えない作用点

クラブヘッドが何度下向きに進んでいたかは、現在の計測器で確認できます。

しかし、その進入角によって、

  • ボール上の圧力中心がどこへ移ったのか
  • ボールカバーがどの方向へ変形したのか
  • 左右方向の作用腕がどれだけ変化したのか
  • ボールがどのような回転を受け取ったのか

は直接には見えません。

見えているのは、アタックアングルというクラブ側の数値です。

見えていないのは、その数値によって作られた、ボール側の接触状態です。

しかし、ボールを中心に考えることで、その見えない部分を推測することはできます。

プロがピンを狙う場面でダウンブローを使うのは、単なる習慣ではないのでしょう。

長年の経験から、

その進入条件の方が、ボールへ力を加える位置と方向を揃えやすい

ことを知っているのかもしれません。

次回は、番手が変わると、ロフト、アタックアングル、バンスがどのように組み合わされ、フェース上の打点とボール側のコンタクトポイントを整えているのかを考えます。

見えないものを見る 第4話 ロフトが増えると、なぜスピンアクシスは傾きにくくなるのか

第3話では、ロフトが大きくなるほど、同じフェース開度でも、ボール重心から見た左右方向のコンタクト偏位が小さくなる可能性を考えました。

低ロフトのクラブでは、フェース向きの変化が、ボール重心から見た左右方向のズレとして大きく現れます。

一方、ロフトが大きくなるほど、その左右方向のズレは小さくなります。

その結果、ボールを左右へ向けるz軸まわりのトルクも小さくなりやすい。

これが、ロフトが増えるほど直進性が高くなる一つ目の理由でした。

しかし、ロフトが大きいクラブの直進性には、もう一つ重要な理由があります。

それが、スピンアクシスです。

ボールは「バックスピン」と「サイドスピン」に分かれて回っているわけではない

ゴルフでは、よく、

  • バックスピン
  • サイドスピン

という言葉が使われます。

しかし、実際のボールが二つの別々の回転をしているわけではありません。

ボールは、一つの軸を中心に回転しています。

その軸が地面に対して水平に近ければ、回転はほぼ純粋なバックスピンになります。

一方、その軸が左右へ傾けば、ボールには横方向の空力が加わり、弾道が曲がります。

つまり、ボールの曲がりを考えるときに重要なのは、

横回転が何回転あるか

というより、

ボールの回転軸がどれだけ傾いているか

です。

この回転軸を、スピンアクシスと呼びます。

スピンアクシスは、回転成分の比で決まる

ボールの回転を単純化して考えると、

  • バックスピン方向の成分
  • 横方向の回転成分

に分けることができます。

スピンアクシスの傾きは、概念的には、この二つの比で決まります。

バックスピン成分を (\omega_{\text{back}})。

横方向の回転成分を (\omega_{\text{side}})。

スピンアクシスの傾きを (\theta) とすれば、

\tan^{-1}
\left(
\frac{\omega_{\text{side}}}
{\omega_{\text{back}}}
\right)
]

と表せます。

ここで重要なのは、スピンアクシスの傾きは、横方向の回転成分だけでは決まらないことです。

同じ横方向の回転成分が存在していても、バックスピン成分が大きければ、軸の傾きは小さくなります。

逆に、バックスピン成分が小さければ、少しの横方向成分でも、軸は大きく傾きます。

同じ500回転でも、意味は同じではない

たとえば、横方向の回転成分が500rpmだったとします。

バックスピンが2,000rpmなら、

となり、スピンアクシスの傾きは約14度です。

一方、バックスピンが5,000rpmなら、

となり、傾きは約6度です。

さらに、バックスピンが8,000rpmなら、傾きは約4度まで小さくなります。

横方向の回転成分は、すべて同じ500rpmです。

しかし、バックスピン量が違うだけで、スピンアクシスの傾きは大きく変わります。

つまり、

横方向の回転が同じ量だけ生じても、総スピンの中で占める割合が違えば、ボールの曲がり方は同じではない

ということです。

ロフトが大きいほど、バックスピン成分が強くなる

一般に、ロフトが大きいクラブほど、ボールには大きなバックスピン成分が与えられます。

もちろん、実際のスピン量は、

  • ボールスピード
  • ダイナミックロフト
  • アタックアングル
  • 打点
  • ボールカバー
  • フェースとボールの摩擦状態

によって変化します。

しかし、ほかの条件が大きく変わらなければ、ロフトの大きいクラブほど、回転ベクトルのうちバックスピン方向の成分は大きくなります。

そのため、同じ大きさの横方向成分が生じても、スピンアクシスは傾きにくくなります。

低ロフトのドライバーでは、総スピン量が少ないため、少しの横方向成分でも、スピンアクシスは大きく傾きます。

一方、ロフトの大きいアイアンやウェッジでは、バックスピン成分が大きいため、同じ横方向成分が存在しても、スピンアクシスの傾きは小さくなります。

これが、高ロフトクラブほど曲がりにくく見える理由の一つです。

直進性には二つの段階がある

ここまでの話を整理すると、ロフトが大きくなることで直進性が上がる理由は、二段階あります。

一つ目は、インパクト時の問題です。

ロフトが大きくなると、同じフェース開度でも、ボール重心から見た左右方向のコンタクト偏位が小さくなります。

その結果、左右方向へ回そうとする作用腕が短くなり、z軸まわりのトルクが小さくなりやすい。

つまり、

そもそも横方向の回転成分を生みにくくなる

ということです。

二つ目は、ボールが飛び出した後の問題です。

仮に横方向の回転成分が生じても、ロフトが大きいクラブでは、バックスピン成分が大きくなります。

そのため、横方向成分の割合が小さくなり、スピンアクシスの傾きも小さくなります。

つまり、

生じた横方向成分が、弾道の曲がりとして現れにくくなる

ということです。

高ロフトクラブは、

  • 横方向の回転を作りにくい
  • 作られた横方向の回転も、軸の傾きとして現れにくい

という二重の構造を持っています。

ドライバーとウェッジでは、同じフェース誤差でも結果が違う

たとえば、ドライバーとウェッジで、フェースとパスの関係に同じ大きさの誤差があったとします。

クラブ側の角度差だけを見れば、同じ誤差です。

しかし、ボール側では結果が異なります。

ドライバーでは、

  • ロフトが小さい
  • 左右方向のコンタクト偏位が大きくなりやすい
  • 総スピン量が少ない
  • 横方向成分の割合が大きくなりやすい
  • スピンアクシスが大きく傾きやすい

という条件が重なります。

一方、ウェッジでは、

  • ロフトが大きい
  • 左右方向のコンタクト偏位が小さくなりやすい
  • バックスピン成分が大きい
  • 横方向成分の割合が小さい
  • スピンアクシスが傾きにくい

という条件になります。

つまり、同じクラブ側の角度誤差でも、

ボールにとっての意味は同じではない

ということです。

ここでも、見えている角度だけで現象を判断することの限界が見えてきます。

スピンアクシスは原因ではなく、結果である

弾道計測器には、スピンアクシスが何度傾いたか表示されます。

しかし、スピンアクシスがボールを曲げた原因なのでしょうか。

より正確には、スピンアクシスは、

  • ボールのどこに力が加わったか
  • どの方向のトルクが生じたか
  • バックスピン方向と横方向へ、どのように角運動量が配分されたか

というインパクトの結果です。

つまり、スピンアクシスは、原因そのものではありません。

ボールが受け取った回転ベクトルを、飛び出した後に表したものです。

この違いは重要です。

一般的な説明では、

フェースとパスの差があるから、スピンアクシスが傾いた

とされます。

実用的には、それで弾道を予測できます。

しかし、実際にボールが受けたのは角度差ではありません。

ボールは、フェース角やクラブパスという数字を読み取って回転したのではありません。

ボールのある位置へ、ある方向の力が加わり、その結果として角運動量を受け取りました。

フェースとパスの差は、その接触状態を作るクラブ側の条件です。

スピンアクシスは、そこから生まれたボール側の出力です。

総スピン量だけを見ても、曲がりは分からない

ゴルフでは、スピン量が多い、少ないという話がよくされます。

しかし、総スピン量だけでは、ボールがどれだけ曲がるかは分かりません。

たとえば、総スピンが6,000rpmでも、その軸がほぼ水平なら、弾道は大きく曲がりません。

反対に、総スピンが2,000rpmでも、軸が大きく傾けば、ボールは大きく曲がる可能性があります。

重要なのは、総量だけではなく、

どの方向の回転として配分されたか

です。

スピン量は角運動量の大きさ。

スピンアクシスは、その角運動量の向き。

この二つを合わせて初めて、ボールの空中での動きを考えることができます。

高ロフトクラブの方向性を、ボール側から見る

一般には、ショートアイアンやウェッジの方向性がよい理由として、

  • シャフトが短い
  • スイングが小さい
  • ヘッドスピードが遅い
  • フェース管理がしやすい

と説明されます。

もちろん、これらも重要です。

しかし、ボール側から見ると、さらに二つの理由が加わります。

第一に、ロフトが大きくなることで、同じフェース開度でも、左右方向のコンタクト偏位が小さくなること。

第二に、バックスピン成分が増えることで、同じ横方向成分が存在しても、スピンアクシスの傾きが小さくなること。

つまり、高ロフトクラブは、

インパクト時にも、飛球中にも、左右方向の誤差が拡大しにくい

という構造を持っている可能性があります。

直進性とは、曲がらないことだけではない

ここでいう直進性とは、単に空中でボールが曲がらないことだけではありません。

  • 初期方向が大きくずれない
  • スピンアクシスが大きく傾かない
  • 横方向の空力が小さい
  • 狙った範囲に着弾しやすい

という一連の安定性です。

ロフトが大きいクラブでは、

まず、コンタクトポイントの左右方向の偏位が小さくなり、初期方向への影響が抑えられる。

さらに、バックスピン成分が大きくなることで、スピンアクシスの傾きも抑えられる。

その結果、打ち出しから着弾まで、左右方向への誤差が拡大しにくくなります。

見えるスピンと、見えない力の配分

弾道計測器には、

  • 総スピン量
  • スピンアクシス
  • 曲がり幅

が表示されます。

しかし、それらはすべて、インパクト後にボールへ残った結果です。

その前に、

  • ボールのどこへ接触したのか
  • どの方向へ力が加わったのか
  • どの方向の角運動量が作られたのか
  • バックスピン成分と横方向成分へ、どのように配分されたのか

という見えない過程があります。

スピンアクシスを見るということは、単に結果の角度を見ることではありません。

その角度の背後で、ボールがどのような力を受け取ったのかを考えることです。

次回は、ロフトというフェース姿勢だけでなく、クラブヘッドの進入方向、つまりアタックアングルが変わると、ボール側の実効コンタクト位置と方向性がどのように変化するのかを考えます。

プロがピンを狙う場面で、なぜダウンブローを強めることがあるのか。

その理由を、スピン量だけではなく、ボール重心に対する作用点とトルクから見直していきます。

天晴!PING GOLF JAPAN

普段は、

「それ、何を言っているんですか?」

と、メーカーのマーケティングに突っ込むことが多い店長です。

しかし今回は、褒めなくてはなりません。

昨年末、i240の日本仕様をコースで試打しました。

打った瞬間に感じたのは、

これは、かなり完成度の高いアイアンだぞ。

ということでした。

ヘッドはコンパクトで、構えた姿は競技志向。

それでいて、必要以上に難しくありません。

ボールはしっかり上がり、飛距離も出る。

そして何より、グリーン上でボールを止められる。

ところが、価格の影響もあるのでしょうか。

実際のマーケットからは、それほど大きな反応を感じません。

MYGOLFSPYの総合評価では目立たない

しかし、ここで少し評価軸を変えてみます。

競技ゴルファーがアイアンに本当に求めるものは何でしょうか。

単純な飛距離でしょうか。

それとも、ヘッドの見た目や打感でしょうか。

もちろん、それらも重要です。

しかし、競技でスコアを作るために欠かせないのは、

狙った距離を打ち、グリーン上でボールを止めること

です。

つまり、ストッピングパワーです。


ストッピングパワーで見ると、i240は別格

MYGOLFSPYのテストデータから、

  • スピン量
  • 最高到達点
  • 落下角
  • キャリーとトータル飛距離の差

を総合して見ると、ストッピング性能の上位は次のようになります。

  1. PING i240
  2. Takomo 201T MKII
  3. Titleist T100
  4. Ballistic CB
  5. Wilson Staff Model CB

i240の7番アイアンは、

項目 テスト結果
ロフト角 33°
キャリー 156.77yd
スピン量 6,170rpm
最高到達点 29.1m
落下角 46.98°
推定ラン 4.96yd

という結果です。

スピン量、最高到達点、落下角、着弾後のラン。

すべてが、今回のテストでトップクラスです。

しかもこれは、単にマッスルバックのようにロフトを寝かせ、スピンを増やした結果ではありません。

33°の7番アイアンでありながら、マッスルバックを上回るほどのストッピング性能を出しています。

PINGが公式に説明しているとおり、i240は低重心化によって高い打ち出しを生み、MOIを高めながら、グリーン上でボールを止めることを狙った設計です。

ただし、このテストはUS仕様

ここで重要なのは、MYGOLFSPYがテストしたのはUS仕様だということです。

US仕様のi240は、7番アイアンが標準で33°。

一方、日本仕様の標準ロフトは31.5°です。

仕様 7番アイアンのロフト
US標準仕様 33°
日本標準仕様 31.5°

USでは31.5°がPower Specとして用意されていますが、日本では、その31.5°が標準仕様として採用されています。

つまり日本仕様は、US仕様より1.5°ロフトを立てることで、飛距離性能を加えた仕様になっています。


日本仕様ではどうなるのか

もちろん、ロフトを33°から31.5°へ変更した場合の正確な数値は、同じテスター、同じボール、同じ打点条件で再計測しなければ分かりません。

それでも一般的な弾道変化から推定すると、おおよそ次のようになります。

項目 33°実測値 日本仕様31.5°の推定
ボール初速 50.4m/s 50.6~50.9m/s
キャリー 156.77yd 160~162yd
トータル 161.73yd 166~168yd
打ち出し角 20.43° 19.2~19.7°
スピン量 6,170rpm 5,700~5,950rpm
最高到達点 29.1m 28.0~28.7m
落下角 46.98° 45.6~46.3°
推定ラン 4.96yd 5.5~6.2yd

ロフトが立つため、スピン量と落下角は少し減少すると考えられます。

その代わり、

  • ボール初速が上がる
  • キャリーが約3~5yd伸びる
  • トータル飛距離も伸びる

という変化が見込まれます。

重要なのは、ロフトを1.5°立てても、推定落下角は45°を超え、スピン量も5,700~5,950rpm程度を維持できる可能性が高いことです。

つまり、日本仕様のi240は、

飛距離が出るだけのストロングロフトアイアンではありません。

飛距離を増やしながら、

  • 十分な高さが出る
  • 十分なスピンが入る
  • 十分な落下角が確保される
  • グリーン上でボールを止められる

という、競技アイアンとして必要な条件を残していると考えられます。


「飛ぶ」ではなく、「飛んで止まる」

多くの日本仕様アイアンは、ロフトを立てることで飛距離を作ります。

しかし、その結果として、

  • 打ち出しが低くなる
  • スピンが減る
  • 落下角が浅くなる
  • グリーンで止まりにくくなる

という問題が生じることがあります。

i240の日本仕様が面白いのは、元となるUS仕様に、十分すぎるほどの高さとスピン、落下角があることです。

その余裕を使ってロフトを1.5°立てる。

すると、ストッピング性能を完全には失わずに、日本のゴルファーが求める飛距離を加えることができます。

言い換えれば、

US仕様の余裕を、日本仕様では飛距離へ変換した

ということです。

31.5°という数字だけを見れば、競技志向アイアンとしては強めのロフトです。

しかし、低重心設計によって高さを出し、スピンと落下角を残すことができれば、単なるロフト商法ではありません。

飛んで、上がって、止まる。

店長がコースで感じた完成度の高さは、このバランスから生まれていたのだと思います。


今回は、PING GOLF JAPANのマーケティングの勝利

普段の店長なら、

「日本仕様だけロフトを立てて、飛距離を大きく見せただけでは?」

と疑うところです。

しかし、今回のi240は少し違います。

US仕様には、もともと圧倒的なストッピング性能があります。

その性能を土台として、日本仕様ではロフトを31.5°に設定。

ストッピング性能に多少の余裕を残しながら、飛距離を加えています。

これは、

止まる性能を削って飛距離を作ったのではなく、止まる性能の余裕を飛距離へ振り分けた

と見ることができます。

日本のゴルファーが求める飛距離。

競技ゴルファーが求める高さ、スピン、落下角。

その両方を狙った仕様です。

……認めたくはありませんが。

今回は、

PING GOLF JAPANのマーケティングの勝利です。

うぐぐぐぅ……。負けた!

コースでは3番アイアンも試打しています。

ロフトは19度、昔でいうと2番アイアンです。流石に立って見えますが、打ってみると高さが出て、ちゃんと飛んでいくんですよ。

SCOTTSDALE TEC のドット

緊急投稿です。

以前の担当の営業さんとSCOTTSDALE TECについて、かなりいいパターだよと言っていたら。

私はそれに加えて、BSさんの限定ボールを使ってますからと聞かされ、気を失いそうにになりました。ドットが2つあるのでどちらを見たらいいのか悩みますとも付け加えてくれました。

どうも、フェースぎりぎりのところにドットがあるのかわかっていないようでしたのでマーケさんの代わりに説明しておきました。

ちょうどSCOTRSDALE TECのドットの位置は円の接線の接点になります。この時、フェースが正しく目標に向いているとします。つまりドットはボールの中心を通り、目標に完全に向いています。そのドットに集中して、ストローク中ドットが構えた位置にあるとして、その点でインパクトすると、必ずストロークパスがインサイドアウトであろうと、アウトサイドインであろうと、また、フェースが開いて閉じたとしても、インパクトのフェースの向きは必ず目標にスクエアです。

中学校で、円の中心を O、円周上の接点を P、その点での接線を とすると、

OP⊥l

ですと習ったでしょ。つまり、

接点へ引いた半径は、その点の接線に必ず垂直になる

という性質があるんだからと説明しました。

ストロークがどうであれ、目標に向かって打ち出されるんだよ説明しました。

そうしたら、彼は、ボールのドットを見ええるか見えない位置して目標の反対側に合わせればいいんですねと。

おおそうきたか!

一理あるので、それに関しては否定しませんでした。

私も以前はそうだったんですが、パターの動きを目で追う癖のある人はそれを直して試してくださいね。

見えないものを見る 第3話 ロフトが増えると、なぜ直進性が上がるのか

第2話では、クラブのフェース向きだけを見るのではなく、球体であるボールのどこへ接触したのかを考えました。

ボールの重心を原点に置き、左右方向をx軸、上下方向をz軸として考えると、同じフェース開度であっても、ロフトによってコンタクトポイントの位置は変わります。

低ロフトのクラブでは、フェース向きの変化が、ボール重心から見た左右方向のズレとして大きく現れます。

一方、ボールウッドの実験の結果がそうであったように、ロフトが大きくなるほど、その左右方向のズレは小さくなります。

この関係を単純化した式で表すと、

となります。

  • (R):ボール半径
  • (L):ロフト
  • (F):フェース開度
  • (x):ボール重心から見た左右方向のコンタクト偏位

フェース開度 (F) が同じであっても、ロフト (L) が大きくなるほど、cos L は小さくなります。

したがって、ボール重心から見た左右方向のズレ (x) も小さくなります。

ここから、ロフトが大きいクラブほど、フェース向きの変化に対する左右方向の感度が下がる理由が見えてきます。

ロフトが増えると、フェースの向きが消えるわけではない

ここで誤解してはいけないのは、

ロフトが増えると、フェース向きの影響がなくなる

ということではありません。

フェースが右を向けば、右方向への影響は残ります。

左を向けば、左方向への影響も残ります。

ただし、その影響がボール重心から見た左右方向へ現れる割合が、小さくなるのです。

ロフトが大きくなると、フェースの向きによって生じる接触位置の変化は、左右方向だけではなく、上下方向にも分配されるようになります。

つまり、

ロフトが増えるほど、フェース向きの変化が左右方向へ集中しにくくなる

と考えられます。

これが、高ロフトのクラブほど直進性が高く見える一つの理由です。

ドライバーとウェッジでは、同じ2度でも意味が違う

たとえば、ドライバーとサンドウェッジのフェースが、それぞれ目標に対して2度右を向いていたとします。

クラブ側の測定値だけを見れば、どちらも同じ「2度オープン」です。

しかし、ボール側から見ると、同じ2度ではありません。

低ロフトのドライバーでは、フェース向きの変化がボール重心から見た左右方向の偏位として大きく現れます。

そのため、打ち出し方向も右へ変化しやすくなります。

一方、ロフトの大きいサンドウェッジでは、同じ2度のフェース開度でも、左右方向の偏位は小さくなります。

接触位置の変化は、左右よりも上下方向へ多く配分されます。

したがって、ドライバーとウェッジでは、

同じ2度のフェース開度でも、ボールにとっての意味は同じではない

ということになります。

測定器に表示される角度が同じでも、球体であるボールとの関係は変わるのです。

数字で比較してみる

フェースが5度開いていると仮定します。

ボール半径 (R) はすべて同じなので、左右方向の偏位を比較するためには、

の値を見れば十分です。

おおよその値は次のようになります。

ロフト 左右方向の偏位を示す係数
10度 0.0858
20度 0.0819
30度 0.0755
40度 0.0668
50度 0.0560
60度 0.0436

ロフト10度と60度を比べると、同じ5度のフェース開度でも、左右方向の偏位はほぼ半分になります。

フェースの開きが半分になったわけではありません。

クラブ側の角度は同じです。

しかし、ボール重心から見た左右方向への作用は、小さくなっています。

これが、ロフトによってフェース向きの影響率が変化する理由として考えられます。

高ロフトほど真っすぐ飛ぶ、という意味ではない

ただし、

ロフトが大きいクラブなら、必ず真っすぐ飛ぶ

という意味ではありません。

実際の弾道には、ほかにも多くの条件が関係します。

  • クラブパス
  • フェース上の打点
  • トウ・ヒール方向のズレ
  • ライ角
  • アタックアングル
  • ヘッド重心
  • ギア効果
  • 芝や水分の介在

これらが加われば、高ロフトのクラブでも左右へ飛び、曲がります。

ここでいう直進性とは、

同じフェース開閉量に対して、左右方向の出力変化が小さくなる

という意味です。

高ロフトになるほど、フェース向きに対する左右方向の感度が下がる。

その結果として、低ロフトのクラブよりも、左右方向への変化が小さく見えるのです。

なぜショートアイアンは方向が安定しやすいのか

一般に、ロングアイアンよりショートアイアンの方が、方向を合わせやすいと感じる人は多いでしょう。

これまでは、

  • シャフトが短いから
  • ヘッドスピードが遅いから
  • ロフトが大きいから
  • スイングが小さくなるから

と説明されてきました。

もちろん、それらも影響します。

しかし、ボール側から見ると、もう一つ理由があります。

ロフトが大きくなることで、同じフェース向きの誤差が、ボール重心から見た左右方向へ現れにくくなるからです。

つまり、ショートアイアンやウェッジは、単に扱いやすいのではなく、

球体であるボールに対して、左右方向の誤差が大きく伝わりにくい幾何学的な条件を持っている

と考えられます。

フェース向きは原因なのか、条件なのか

一般的な飛球理論では、ボールの打ち出し方向は、主にフェース向きによって決まると説明されます。

実用上、この説明は有効です。

しかし、今回のようにロフトによって影響率が変わることを考えると、フェース向きを単独の原因として扱うことには疑問が残ります。

もし、フェース向きそのものがボール方向を直接決めているなら、同じフェース角の変化は、ロフトが変わっても同じように作用するはずです。

しかし、実際にはそうなりません。

ロフトが変わることで、ボール球面上のコンタクトポイントが変わる。

ボール重心から見た左右方向の偏位が変わる。

その結果、ボールへ加わる力の方向と配分も変わる。

つまり、フェース向きは、

ボールの飛び方を単独で決める原因

というより、

ボール上の接触位置と力の方向を決める条件の一つ

と考えた方が、現象を説明しやすくなります。

直進性はクラブ側だけでは決まらない

クラブを正面から見れば、フェースが何度開いているかは測定できます。

しかし、ボール側から見れば重要なのは、

  • そのフェースがボールのどこへ接触したか
  • ボール重心からどの方向へずれていたか
  • どの方向へ力が加わったか

です。

低ロフトでは、フェース向きの変化が左右方向の偏位として大きく現れる。

高ロフトでは、その左右方向の偏位が小さくなり、上下方向への成分が大きくなる。

この構造を考えると、ロフトが増えるほど直進性が上がる理由は、

ロフトそのものがボールを真っすぐ飛ばすから

ではなく、

同じフェース向きの誤差が、ボール重心から見た左右方向へ伝わりにくくなるから

と説明できます。

見える角度と、見えない作用

弾道計測器には、フェース向きが2度開いていたと表示されます。

その数字は正しいのでしょう。

しかし、その2度がボールにどのように作用したかは、ロフトによって変わります。

見えているのは、クラブ側の2度です。

見えていないのは、その2度によって、

  • ボールのどこへ接触したのか
  • ボール重心からどれだけ左右へずれたのか
  • 力がどの方向へ配分されたのか

という、ボール側の変化です。

同じ数字でも、現象の意味は同じではありません。

知識というフィルターを通して見えない部分を考えると、表示された角度の向こう側にある構造が見えてきます。

次回は、アイアンの番手が変わると、ロフトだけでなく、アタックアングル、バンス、ボールの支持高さがどのように変化し、それによって打点がどう移動するのかを考えていきます。

見えないものを見る 第1話 コペルニクスは、なぜ中心を入れ替えたのか

コペルニクス的発想の転換とは、既存の理論に新しい説明を付け加えることではありません。

自分が立っている場所そのものを、別の位置から見直すことです。

かつて人類は、地球を中心に太陽や星が動いていると考えていました。

なぜ、人類は間違えたのでしょうか。

当時の人々の観察力が低かったからではありません。

地球が動いていることが、見えなかったからです。

地面に立っていても、地球が自転している感覚はありません。

一方、太陽は東から昇り、西へ沈んで見えます。

夜空の星も、時間とともに空を移動していきます。

見えているものだけを素直に受け取れば、空が動き、地球は止まっていると考える方が自然です。

しかし、コペルニクスは、見えている天体の動きに説明を付け足したのではありません。

地球を中心から外し、地球そのものが動いていると考えました。

現象を見る中心を入れ替えたのです。

人間は、網膜に映った画像を、そのまま脳内へ転写しているわけではありません。

目に入った情報を、知識や経験、身体感覚と組み合わせて、意味のある世界へ再構成しています。

その証拠に、現代人が夜空の星や太陽の動きを見ても、それをそのまま天体が地球の周囲を回っている証拠だとは考えません。

網膜に映る景色は、昔の人々とほとんど変わらないはずです。

変わったのは、画像を処理するための知識です。 “見えないものを見る 第1話 コペルニクスは、なぜ中心を入れ替えたのか” の続きを読む

G LEはどう変わったか? パター編

ドライバー、フェアウェイウッド、ハイブリッド、アイアンに続いて、今回はパターです。

G LE 3からG LE 4への変化を見ると、パターはラインアップが4モデルから3モデルへ整理されました。

まず、新旧のラインアップを比較してみます。

ストロークタイプ G LE 3 G LE 4
セミアーク ANSER ANSER 2D
アーク LOUISE LOUISE
ストレート FETCH/KETSCH G OSLO

G LE 3では4モデルが用意されていましたが、G LE 4では、

ANSER 2D
LOUISE
OSLO

の3モデルになりました。

モデル数は減りましたが、

セミアーク
アーク
ストレート

という3種類のストロークタイプを、きちんとカバーしています。

つまり、単に選択肢を減らしたというより、役割の重複を整理し、それぞれのストロークタイプに合うモデルを分かりやすくしたと考える方がよいでしょう。

ANSERからANSER 2Dへ

G LE 3では、ブレード型のANSERが採用されていました。

G LE 4では、これがANSER 2Dに変わりました。

ANSER 2Dは、通常のANSERよりもヘッドの奥行きが大きい、ワイドブレード形状です。

ブレード型の操作性を残しながら、ヘッドの奥行きを大きくすることで、打点がズレた時のブレを抑えています。

G LE 3のANSERも、周辺重量配分によって操作性と寛容性を両立したモデルでした。

しかし、G LE 4ではANSER 2Dへ変更することで、構えた時の安心感とミスヒットへの強さを、さらに高めています。

見た目はブレード型。
しかし、性能はミッドマレットに近い。

これがANSER 2Dの特徴です。

パターでは、ブレード型を好むゴルファーが多くいます。

構えやすい。
フェースの向きを感じやすい。
距離感を出しやすい。
操作しやすい。

その一方で、一般的なブレード型は、大型マレットよりもミスヒットに弱いという問題があります。

ANSER 2Dは、その弱点を奥行きのあるヘッド形状で補っています。

G LE 3のANSERが「感性で打てるピン型」だったとすれば、G LE 4のANSER 2Dは、

ブレード型の感性を残しながら、さらに安心感を増したパター

です。

ヘッド重量も5g重くなりました。

これにより、ストローク中にヘッドの位置を感じやすくなり、小さなストロークでもテンポを安定させやすくなっています。

LOUISEは継続

LOUISEは、G LE 3からG LE 4へ継続された唯一のモデルです。

丸みを帯びたミッドマレット形状で、ショートスラントネックを採用しています。

ストロークタイプはアークです。

フェースを開閉しながらストロークするゴルファーに合わせやすいモデルです。

LOUISEが継続されたことからも、この形状が高く評価されていたことが分かります。

構えた時に大きすぎない。
ブレード型より安心感がある。
大型マレットほど動かしにくくない。
フェースの開閉も感じやすい。

この中間的な位置にあるのがLOUISEです。

G LE 4のLOUISEでは、軽量のアルミボディと高比重のステンレスプレートを組み合わせた複合素材構造が採用されています。

軽い素材と重い素材を組み合わせることで、重量をヘッドの低い位置や外周へ配分できます。

これにより、重心を低くしながら慣性モーメントを高めています。

見た目は操作しやすいミッドマレットですが、内部構造ではミスヒットへの強さも高められています。

ヘッド重量はこちらも5g重くなりました。

軽量クラブを使うゴルファーであっても、パターまで軽くしすぎると、ストローク中にヘッドの位置が分かりにくくなることがあります。

パターには、飛距離を出すための軽さは必要ありません。

むしろ、適度なヘッド重量によって、

ヘッドの位置が分かる。
ストロークのテンポが安定する。
小さな動きでもボールへ力を伝えられる。

ということが重要です。

G LE 4では、ドライバーやアイアンは軽く振りやすくしながら、パターには適度なヘッド重量を持たせています。

ここは、クラブごとの役割を考えた設計だと思います。

FETCHとKETSCH GをOSLOへ集約

G LE 4では、FETCHとKETSCH Gの2モデルがなくなり、ストレートタイプのモデルとしてOSLOが採用されました。

OSLOは、安心感のある大型マレットです。

フェースバランス設計で、フェースの開閉を抑えたストレートタイプのストロークに対応します。

ヘッド中央には太い白いアライメントラインが入り、目標に対してフェースを合わせやすくなっています。

G LE 4のOSLOは、

構えやすい。
目標へ合わせやすい。
ミスヒットに強い。
直進性が高い。

という、ストレートタイプに必要な性能へ集中したモデルだと考えられます。

ヘッド重量は360gです。

これはG LE 3のKETSCH Gと同じ重量です。

大型マレットとして十分な重量があり、ストローク中のヘッド挙動を安定させやすくなっています。

フェースインサートの変更

2層PEBAXから1層PEBAXへ

フェースインサートも変更されました。

G LE 3では、硬さの異なるPEBAXを組み合わせた2層構造のインサートが採用されていました。

G LE 4では、新しい1層構造のPEBAXインサートへ変更されています。

このインサートは、柔らかい打感を持ちながら、必要な反発性も確保しています。

G LE 3では、柔らかさと反発性を、硬さの異なる素材を組み合わせることで作り分けていました。

G LE 4では、1層の素材でその両方を成立させようとしています。

構造をシンプルにしながら、

柔らかく感じる。
しかし、ボールはしっかり転がる。
距離感がぼやけにくい。

という性能を狙っています。

パターは、打感が柔らかければよいとは限りません。

柔らかすぎると、インパクトの強さが手に伝わりにくくなり、距離感がぼやけることがあります。

反対に、硬すぎるとボールが弾き出される感覚が強くなり、短い距離でタッチを合わせにくくなることがあります。

G LE 4の1層PEBAXインサートは、柔らかさと転がりのバランスを狙った変更だと考えられます。

複合素材による低重心化

ANSER 2Dは、17-4ステンレススチールを主体としたヘッドです。

一方、LOUISEとOSLOは、軽量のアルミボディと高比重のステンレスプレートを組み合わせています。

軽い素材と重い素材を組み合わせることで、重量をヘッドの低い位置や外周へ配置できます。

その結果、

重心が低くなる。
慣性モーメントが高くなる。
打点がズレてもフェースがブレにくい。
ボールの打ち出しと転がりが安定する。

という効果が期待できます。

ドライバーやアイアンでは、低重心化によってボールを上げやすくしていました。

一方、パターで低重心化する目的は、ボールを高く上げることではありません。

インパクト時のヘッド挙動を安定させ、打ち出し方向と転がりをそろえることです。

G LE 4では、パターでも「ミスを減らし、結果をそろえる」という考え方が採用されています。

グリップの変更

G LE 4では、PP58 TOUR M LILACグリップが標準装着されています。

グリップに関しては、フルモデルチェンジです。

適度な太さを持つピストル型グリップで、レディスモデルに合わせて、よりソフトな素材が使われています。

グリップが細すぎると、手首や指先の動きが増えやすくなります。

反対に、太すぎると手の感覚が薄れ、フェースの向きを感じにくくなることがあります。

PP58 TOUR Mは、

余計な手首の動きを抑える。
フェースの向きは感じ取れる。
強く握りすぎにくい。

というバランスを狙ったグリップだと思います。

単なるカラー変更ではなく、手とパターをつなぐ重要な機能部品として見なければなりません。

まとめ

G LE 3からG LE 4へのパターの変化を整理すると、

ANSERから、より安心感のあるANSER 2Dへ。
LOUISEは、複合素材構造を採用して継続。
FETCHとKETSCH Gを、直進性の高いOSLOへ整理。
2層構造のPEBAXから、柔らかさと反発性を両立した1層PEBAXへ。
ANSER 2DとLOUISEは、ヘッド重量を5g増加。
グリップはPP59からPP58 TOUR Mへ変更。

という進化です。

モデル数を減らしながら、

操作性。
寛容性。
アライメント。
転がり。
ストロークタイプ。

この5つを、より分かりやすく整理したのがG LE 4パターです。

G LE 3は、4つのモデルから好みの形状を選ぶパターシリーズでした。

G LE 4は、3つのストロークタイプを基準に、自分に合う性能を選びやすくしたパターシリーズです。

G LE 4パターの進化は、モデルを増やすことではなく、必要な選択肢を整理し、それぞれの役割を明確にしたことにあると思います。

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G LEはどう変わったか? 第4話 アイアン編

ドライバー、フェアウェイウッド、ハイブリッドに続いて、今回はアイアンです。

G LE 3からG LE 4への変化を見ると、アイアンはフェアウェイウッドやハイブリッドほど、スペック表上の違いは大きくありません。

まず、新旧のロフトを比較してみます。

番手 G LE 3 G LE 4
6I 25° 25°
7I 29.5° 29.5°
8I 35° 35°
9I 41° 41°
PW 46° 46°
UW 52° 52°
SW 56° 56°

番手構成もロフトも、基本的にはG LE 3から変わっていません。

これは意外に感じるかもしれません。

G LE 4は、アイアン単体ではなく、ハイブリッドと組み合わせたコンボ・ソリューションとして設計されています。 “G LEはどう変わったか? 第4話 アイアン編” の続きを読む