第2話 スクエアスタンスでは、変数が多すぎる

有効重量 m を一定にするためのオープンスタンス

前回は、オリムピッククラブで見たイアン・ポールターのアプローチ練習から、

アプローチは、ボールではなくウェッジへの入力から始まる

という話をしました。

ポールターのアプローチは、手先で距離を合わせているようには見えませんでした。
インパクトで弱めている感じもない。
大きく上げて、当たる直前に調整している感じもない。

むしろ、構えの時点で、すでにウェッジに入る入力の上限を決めているように見えました。

その中心にあったのが、スタンスの向きです。

スタンスをオープンにすることで、バックスイングが大きくなりすぎない。
そして、フォロー側には身体が抜けていく。

この構造が、距離感の安定につながっているのではないか。

今回はその理由を、有効重量という考え方から整理してみます。


距離感は、ヘッドスピードだけでは決まらない

アプローチの距離感というと、多くの人はヘッドスピードを考えます。

速く振れば飛ぶ。
遅く振れば飛ばない。

もちろん、それは間違いではありません。 “第2話 スクエアスタンスでは、変数が多すぎる” の続きを読む

第1話 マキロイより気になったポールターの安定感

アプローチは、ボールではなくウェッジへの入力から始まる

オリムピッククラブで、イアン・ポールターのアプローチ練習を見たことがあります。

その時、近くではローリー・マキロイも練習していました。

普通に考えれば、目を奪われるのはマキロイです。
世界トップクラスのスイング。
圧倒的なスピード。
身体能力の高さ。
ボールを打つ姿そのものに、華があります。

ところが、その時の私は、なぜかポールターのアプローチから目が離せませんでした。

理由は、派手さではありません。
高く上げる球でも、強烈なスピンでもありません。

むしろ、見た目にはとても静かでした。

しかし、ボールが同じような距離に集まっていく。
構えが大きく変わらない。
リズムも大きく変わらない。
インパクトで緩んでいる感じもない。

その安定感が、妙に印象に残ったのです。

イアン・ポールターといえば、ライダーカップで強さを発揮した選手です。

ヨーロッパチームの一員として、何度も重要な場面で結果を出してきました。
“THE POSTMAN” と呼ばれたのも、必要な場面で必ず仕事を届ける、という意味合いがあったのだと思います。

一打一打の意味が重くなる場面で、力を発揮できる選手です。

そのポールターのアプローチ練習を見ていると、なるほどと思う部分がありました。

勝負どころで強い選手のアプローチは、手先で距離を合わせているようには見えない。
偶然寄せているようにも見えない。

最初から、距離が大きく外れない構造を作っているように見えたのです。

私が特に気になったのは、スタンスの向きでした。

ポールターは、スタンスのオープン度を変えることで、バックスイングの大きさを制限しているように見えました。

つまり、何ヤードだから手でここまで上げる、というよりも、
構えた時点で、

そこまでしか上がらない状態

を作っているように見えたのです。

これは、非常に重要です。

多くのアマチュアは、短いアプローチで距離を落とそうとすると、インパクトで弱めます。

大きく上げて、当たる直前に緩める。
ヘッドを止める。
身体を止める。
手で合わせる。

しかし、それでは毎回違うインパクトになります。

ある時は身体ごと動く。
ある時は腕だけになる。
ある時は手首だけで合わせる。
ある時はヘッドだけが走る。

これでは、距離感がそろいません。

アプローチの距離感というと、多くの人はまず結果を考えます。

何ヤード飛ばすか。
どこに落とすか。
どれくらい転がすか。
スピンを入れるか。
高く上げるか。
低く出すか。

もちろん、それらは大切です。

しかし、それはすべて結果側の話です。

その前にあるのは、

ウェッジにどれだけの入力を与えるか

です。

ここを見落としてはいけません。

アプローチは、ボールをどうするかの前に、ウェッジに何をさせるかです。

ウェッジに入る入力が大きすぎれば、インパクトで減速しなければならない。
入力が小さすぎれば、芝に負ける。
入力が毎回違えば、キャリーもスピンもランも読めない。

だから、まず制御すべきなのはボールではありません。

ウェッジへの入力です。

この時のポールターのアプローチは、まさにそこが整理されているように見えました。

スタンスの向きで、バックスイングの大きさを制限する。
バックスイングの大きさが制限されれば、クラブヘッドが加速できる距離も制限される。
加速できる距離が制限されれば、インパクト時のヘッド速度も大きくなりすぎない。

つまり、距離をインパクトで殺しているのではなく、
構えの時点で、ウェッジに入る入力の上限を決めている。

ここに、プロのアプローチの大きなヒントがあります。

アプローチが苦手な人ほど、インパクトで距離を合わせようとします。

「強かった」
「弱かった」
「緩んだ」
「入った」
「手が出た」
「ヘッドが走った」

こういう言葉が多くなります。

しかし、インパクトで調整している限り、距離感は安定しません。

なぜなら、インパクトは一瞬だからです。
その一瞬で、速度、ロフト、フェース向き、最下点、入射角、スピン量をすべて合わせようとするのは、あまりにも難しい。

本来は逆です。

インパクトで合わせるのではなく、
インパクトまでに、すでに合う状態を作っておく。

ポールターのアプローチには、その考え方が見えたのです。

このシリーズでは、アプローチを少し違う角度から考えていきます。

テーマは、距離感ではありません。

もっと手前にある、

ウェッジへの入力制御

です。

アプローチの距離は、単に振り幅だけで決まるわけではありません。
ヘッドスピードだけで決まるわけでもありません。

身体とクラブがどれだけつながっているか。
どれだけ一定の圧力でクラブを動かせているか。
どれだけの加速距離を与えているか。

そうした要素によって、ウェッジへの入力は決まります。

そして、その入力が安定して初めて、ボール位置、フェースの開き、バンス、グリップポジションといった出力側の調整が意味を持ちます。

ポールターのアプローチ練習を見た時、私はただ「安定している」と感じました。

しかし、今あらためて考えると、その安定感には理由があったのだと思います。

距離を手で合わせていたのではない。
インパクトで弱めていたのでもない。
大きく振って、途中で調整していたのでもない。

構えの段階で、ウェッジへの入力を決めていた。

その入力が大きくなりすぎないように、スタンスの向きでバックスイングを制限していた。
そして、その制限された入力を、最後まで止めずに使っていた。

だから、短い距離でも緩まない。
だから、ボールが同じような距離に集まる。
だから、アプローチに安定感が出る。

アプローチは、ボールに合わせる技術ではありません。

まず、ウェッジに入る入力をそろえる技術です。

ボールの高さ、スピン、ラン、落とし場所は、その後に出てくる結果です。

次回は、この入力をもう少し物理的に考えます。

特に重要になるのは、

有効重量

です。

同じヘッドスピードでも、身体とクラブが一体で動いているのか、手先だけで合わせているのかで、ボールに伝わる仕事量は変わります。

つまり、距離感を狂わせているのは、スピードだけではありません。

ウェッジに乗っている有効重量が、毎回変わっていること。

ここに、アプローチが安定しない大きな理由があります。

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ヘッドスピードは上がった。では、ボールは速くなったのか?第3話

売れる言葉と、PINGが見ていたもの

――しなりの大きさではなく、ボールに何が伝わったか――

前回は、ヘッドスピードアップ練習器具の効用と危険性について書きました。

ヘッドスピードを上げる練習器具には、たしかに効用があります。

普段より強く振るきっかけになる。
出力制限が外れる。
リリース不足だった人が、ヘッドを出せるようになる。
一時的に飛距離が伸びることもある。

ですから、ヘッドスピードアップ系の練習器具を、すべて否定したいわけではありません。

ただし、問題はその先です。

そのヘッドスピードが、どのように作られたのか。
そして、その速度がボールスピードに変換されたのか。

ここを見なければなりません。

体を止める。
手を使う。
リリースを早くする。
身体とクラブの束縛を早く切る。

こうした動きでも、ヘッドスピードという数字は上がります。

しかし、その代わりに有効重量を失い、インパクトでクラブが軽くなっているなら、それは本当に飛ぶスイングに近づいたとは言えません。

ヘッドスピードは上がった。
しかし、クラブは軽くなった。

ここに、ヘッドスピードアップという言葉の難しさがあります。 “ヘッドスピードは上がった。では、ボールは速くなったのか?第3話” の続きを読む

ヘッドスピードは上がった。では、ボールは速くなったのか?第2話

ヘッドスピードアップ練習器具の効用と危険性

――一時的に飛ぶからこそ、注意が必要です――

前回は、金沢市のジュニア練習会での出来事から、ヘッドスピードと飛距離は同じではないという話をしました。

簡易的な測定器では、ジュニアの方がヘッドスピードで勝っていました。
しかし、実際にボールを打つと、委員長の方が50ヤードほど飛ぶ。

ここに、ヘッドスピードという数字の難しさがあります。

ヘッドスピードは、クラブヘッドがどれだけ速く動いたかを示す数字です。
しかし、飛距離を決めるのは、それだけではありません。

本当に見るべきなのは、

そのヘッドスピードが、どれだけボールスピードに変換されたか

です。

今回は、そこからもう一歩進んで、ヘッドスピードを上げる練習器具について考えてみたいと思います。


ゴルフの練習器具には、ヘッドスピードアップを前面に出したものがたくさんあります。

ヘッドスピードが上がる。
振るだけで飛距離アップ。
ヘッドが走る。
速く振れるようになる。

こうした言葉は、とても分かりやすいです。

そして、実際に使ってみると、一時的にヘッドスピードが上がることもあります。
場合によっては、ボールスピードが上がり、飛距離が伸びることもあります。

ですから、私はヘッドスピードアップ系の練習器具を、すべて否定したいわけではありません。

効用はあります。

普段より強く振るきっかけになる。
普段より大きく振るきっかけになる。
リリース不足だった人が、ヘッドを出せるようになる。
クラブを振ることへの怖さが減る。
自分にはまだ速く振れる余地があると気づく。

こういう意味では、ヘッドスピードアップ系の器具は、一定の役割を持っています。 “ヘッドスピードは上がった。では、ボールは速くなったのか?第2話” の続きを読む

第2話 PLDなのか、Scottsdale TECなのか

Reitanの使用パターから見えるPINGのツアーカスタム思想

前回は、Kristoffer Reitanの優勝について見てきました。

ノルウェー出身のReitan。
ノルウェーといえば、ビクター・ホブラン。
そして、PING創業者カーステン・ソルハイムの故郷でもあります。

そのノルウェーから来た選手が、PINGのパターを手にしてPGA TOURで勝利した。

しかも、勝利の大きな鍵になったのがパッティングでした。

PING Tourの投稿では、Reitanはその大会で Strokes Gained: Putting 2位
つまり、グリーン上で大きくフィールドに差をつけていたことになります。

では、そのパッティングを支えたパターは、いったいどのようなものだったのでしょうか。

今回見ていきたいのは、Reitanが使用した Custom PLD Ally Blue H です。

ただし、このパターは少し不思議です。

公式にはPLD。
しかし、見た目にはScottsdale TEC Ally Blue Hの要素も強く感じます。

今回は、そのあたりを整理してみたいと思います。


公式には、Custom PLD Ally Blue H

まず、事実として押さえておきたいのは、Reitanのパターが Custom PLD Ally Blue H と紹介されていることです。

Alistair Cameron@ACameronWRX

A great time for Kristoffer Reitan to add a

PLD Milled Ally Blue H to the bag! With more toe hang than his previous putter, the custom head was created so that he could see an uninterrupted sight line. He also added the G440 K 9 degree w/Mitsubishi Tensei White 1K 60TX

PLDと聞くと、多くのPINGファンは、削り出し、精密加工、ツアー仕様、プレーヤーの感覚に合わせた作り込みを思い浮かべると思います。 “第2話 PLDなのか、Scottsdale TECなのか” の続きを読む

PING i540打感考察②

「なんて打感が良いんだ」

——トップアマの言葉から、i540の打感を考える

前回は、PING i540アイアンの海外レビューで使われている表現について整理しました。

日本では「打感が良い」「柔らかい」と表現されることが多い一方で、海外レビューでは、

hot
solid
muted

といった言葉が使われています。

つまりi540の打感は、単純な「柔らかさ」ではなく、

強く出る。
芯がある。
音と振動は抑えられている。

という方向で理解したほうがよいのではないか、という話でした。

今回は、その感覚を実際の試打の中から考えてみたいと思います。

あるトップアマの方が、i540を打ったときのことです。

その方は、非常に良いスイングをされています。
私の見方で言えば、スターシステムに則ったスイングです。

身体の回転、支点、クラブの走り、ライン・オブ・コンプレッションがきれいにつながり、手でインパクトを作りにいくのではなく、スイングの構造の中でクラブがボールへ届く。

そういうスイングでした。

しかし、最近は少し調子を落としていました。

その状態でi540を打ったとき、最初に出た言葉が、

「なんて打感が良いんだ」

でした。

この言葉は、とても印象的でした。 “PING i540打感考察②” の続きを読む

PING i540打感考察①

PING i540の打感は、なぜ「柔らかい」だけでは説明できないのか

——海外レビューの “hot / solid / muted” から読み解く

PING i540アイアンについて、海外レビューも含めて確認していると、少し面白いことに気づきました。

日本では、i540の打感について、

「打感が良い」
「柔らかい」
「中空とは思えない」
「音が静か」

という表現が多く見られます。

もちろん、i540の打感は非常によく作られていると思います。

ただ、海外レビューでは少し表現が違います。

i540の打感を単純に soft と言うよりも、

hot
solid
muted
lively
responsive

といった言葉で表現しているものが目立ちます。

ここが、とても気になりました。

日本語で「打感が良い」と言うと、多くの方はまず「柔らかい打感」を想像するかもしれません。

軟鉄鍛造のように、しっとりしている。
手に伝わる衝撃が丸い。
フェースにボールが乗るように感じる。

そういう感覚です。

しかし、海外レビューで使われる hot は、それとは少し違います。

hot は、ゴルフクラブの打感で使われる場合、

ボールが強く出る
初速感がある
自分の想像より打球が前へ出る

という意味に近いと思います。

つまり、i540の打感は、

「柔らかく沈み込む」

というより、

一瞬受け止めて、そこから強く出る

と表現したほうが近いのかもしれません。

ここで、日本語の表現の難しさがあります。

たとえば英語では、「辛い」にもいくつかの言い方があります。

salty なら、塩辛い。
hot なら、唐辛子のような熱い辛さ。
spicy なら、香辛料が効いた刺激。

日本語では、これらをまとめて「辛い」と言ってしまうことがあります。

「甘い」も同じです。

砂糖の甘さだけでなく、

米が甘い。
脂が甘い。
出汁が甘い。

本当は、旨みやコク、角の取れた丸さを感じているのに、「甘い」と表現することがあります。

打感も、これに近いと思います。

日本語の「打感が良い」という言葉の中には、実はいろいろな感覚が含まれています。

柔らかい。
芯がある。
音が低い。
振動が少ない。
球が強く出る。
打点が分かる。
嫌な硬さがない。
弾くけれど雑ではない。

これらをまとめて、私たちは「打感が良い」と言ってしまうことがあります。

しかし英語レビューでは、その中身をもう少し分けます。

soft は、柔らかい。
軟鉄鍛造のように、衝撃が丸く、しっとりした打感です。

hot は、打球が強く出る。
フェースからボールが勢いよく飛び出す感覚です。

solid は、芯がある。
薄っぺらくなく、当たり負けしない感覚です。

muted は、音や振動が抑えられている。
甲高い音や余計な響きが少ない打感です。

lively は、反応が良い。
ボールが元気よく出る感覚です。

responsive は、入力に対して返りがある。
打点や当たり方の情報が手に伝わる感覚です。

こう考えると、海外レビューでi540が soft というより hot / solid / muted と表現されている理由が見えてきます。

i540は、軟鉄鍛造アイアンのように、ただ柔らかく沈み込む打感を目指したクラブではありません。

C300マレージング鋼の薄肉フェースを使い、フェースをたわませ、その復元でボール初速を作るアイアンです。

つまり、打感の中には明らかに「出球の強さ」があります。

しかし、その強さが不快な硬さとして出ていない。

ここが重要です。

薄肉フェースのアイアンは、一歩間違えると、

カチッと硬い。
パチンと軽い。
音が高い。
中空っぽく響く。

という印象になりやすいです。

ところがi540では、inR-Airやi-Beamによって、余計な音と振動を抑えています。

そのため、球は強く出る。
しかし、音は暴れない。
フェースの弾きはある。
しかし、手には嫌な硬さとして残りにくい。

だから海外レビューでは、単純に soft ではなく、

hot
solid
muted

という表現になるのだと思います。

日本語で言えば、

強く出るのに、嫌な硬さがない打感

です。

あるいは、

弾くのに、雑ではない打感

と言ってもよいかもしれません。

ここを「柔らかい」とだけ言ってしまうと、i540の本当の良さが少しぼやけます。

i540の打感は、軟鉄鍛造のしっとりした柔らかさとは違います。

しかし、ただ硬く弾くわけでもありません。

一瞬、ボールを受け止める。
そこから、自分が想像しているよりも強い打球が出る。
そして、その強さを音や振動で過剰に主張しない。

このあたりが、i540の打感の面白さだと思います。

日本のレビューで「打感が良い」と言われる理由も、海外レビューで hot / solid / muted と表現される理由も、おそらく同じところを見ています。

ただ、使っている言葉が違う。

日本語では「打感が良い」とまとめる。
海外では、その中身を hot、solid、muted と分ける。

その違いです。

ですから、i540の打感を理解するうえでは、まずこの整理が大事になります。

i540は、柔らかいだけのアイアンではありません。

むしろ、

強く出る。
芯がある。
音と振動は抑えられている。

この3つがそろった打感です。

そしてこの「強く出るのに、嫌な硬さがない」という感覚は、昔の良いアイアンを知っているゴルファーほど、少し懐かしく感じる部分があるのかもしれません。

次回は、実際にi540を打ったトップアマの方が口にした、

「なんて打感が良いんだ」

という言葉から、この打感の正体をもう少し掘り下げてみたいと思います。

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PINGのツアー現場では、ショートウッドを“HBのように”組んでいる 第5話

ここまで、ツアーでは7W、9Wへのシフトが進んでいること、そしてアマチュアでは逆にアイアン側からハイブリッドへ境界が下がってきていることを書いてきました。

その流れの中で、もうひとつ注目したいのが、
PINGのツアー現場では、ショートウッドを単なるフェアウェイウッドとしてではなく、HBのような役割で組んでいる
という点です。

その実例として分かりやすいのが、ケントン・オーツ氏が語っているホアキン・ニーマンの7Wです。
GOLF.comの記事では、ニーマンが2020年のメモリアルで、硬いグリーンに対して250〜255ヤードから止められるクラブを必要としていたこと、その相談に対してオーツ氏が勧めたのが7Wだったことが紹介されています。しかもニーマンは当初、7Wは「高く上がりすぎるのではないか」と考えていたのですが、オーツ氏はそこを調整したうえで提案し、結果としてそのクラブは今もバッグに残り続けています。

ここで大事なのは、
7Wが入った理由が、単に「やさしいから」ではないことです。

ニーマンのケースで必要だったのは、
長い距離を上げて、しかもグリーンで止めること
でした。
その役割に対して、オーツ氏はハイブリッドではなく7Wを選んだ。しかもその7Wは、40.5インチに短尺化されていました。標準より少し短くすることで、コントロールしやすくしながら、必要な高さとスピンを確保する。ここに、PINGのツアー的な発想がよく出ています。

さらに2026年マスターズ週のツアーレポートでも、オーツ氏は、4番アイアンと高ロフトのメタルウッドの差について、本当の違いは高さそのものよりもスピンにあると説明しています。4番アイアンでも近い高さは作れるが、グリーン上で反応を変えるのは、メタルウッド側が持つ“余分なスピン”だ、という趣旨です。これは非常に重要な指摘です。

つまりPINGのツアー現場では、ショートウッドを

  • ただ高く上がるクラブとしてではなく
  • アイアンやHBでは足りない止める性能を補うクラブとして
  • 必要に応じて長さまで調整しながら

組んでいるということです。

ここまで来ると、7Wはもはや単なるFWではありません。
見方を変えれば、HB的な役割を持たせたショートウッドです。

ハイブリッドのようにトップ側の距離階段の中へ入れながら、
ハイブリッドよりも高く、よりスピンを入れて、より止めやすくする。
そのために、ロフトだけでなく長さまで含めて整える。
これが、オーツ氏の話から見えてくるPINGツアーの組み方です。

これはアマチュアにもかなり参考になります。

7Wを入れるというと、どうしても
「球が上がりやすいから」
「やさしいから」
という理解で終わりがちです。

もちろんそれも間違いではありません。
ただ、ツアーの発想はそこでもう一段深い。

このクラブを、何の仕事をさせるために入れるのか。
そこから逆算しているのです。

たとえば、

  • 4Iではグリーンで止まりにくい
  • 4Hでは悪くないが、もう少し高さとスピンが欲しい
  • 5Wでは飛びすぎる

そういう場所に、HBのような役割で組んだショートウッドが入ってくる。
これが、PINGのツアー版が実際にやっていることなのだと思います。

ですから、FWかHBかという二択だけで考えるのではなく、

FWをHBのように使う
という考え方を持っておくと、トップ側のセッティングは一気に見えやすくなります。

ツアーで7Wや9Wが増えているのは、単なる流行ではありません。
その中身をよく見ると、そこには
止めるためのスピンを確保し、距離階段の中に収めるためにショートウッドを再設計する
という、非常に実戦的な意図があります。

そして、その発想は、アマチュアがクラブを選ぶときにも十分使えるはずです。
7Wを7Wとして見るのではなく、
自分のセットの中で、HB的な仕事をさせる一本として見る。

そう考えると、ショートウッドの意味はかなり変わって見えてきます。

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7W・HB・アイアンは、何で選ぶべきなのか 第4話

飛ばしたい気持ちと、止めたい現実のあいだで

ここまで、ツアーでは7Wや9Wへのシフトが進んでいること、そしてアマチュアではアイアン側からハイブリッドへ境界が下がってきていることを書いてきました。

では実際に、
7Wがいいのか、HBがいいのか、それともアイアンを残すべきなのか。
何を基準に見ていけばよいのでしょうか。

まず整理しておきたいのは、それぞれのクラブが持っている役割の違いです。

7Wや9Wのようなショートウッドは、高く上がりやすく、落下角が取りやすい。
ですから、長い距離でもグリーンで止めたい場面では、非常に意味のあるクラブになります。

一方でHBは、その中間にあります。
アイアンより球が上がりやすい。
それでいて、フェアウェイウッドほど長さを感じにくい。
つまり、高さと扱いやすさのバランスを取りやすいクラブです。

そしてアイアンには、低めの強い球、形の安心感、操作感という魅力があります。
ただし、その番手で本当に高さやキャリーが足りているかどうかは、また別の話です。

ここで面白いのは、クラブ選びが単なる性能比較では終わらないことです。
上の番手のクラブ選びには、いつも二つの欲求があります。

ひとつは、少しでも前へ運びたいという飛距離への欲求
もうひとつは、狙った場所まで運び、そこで止めたいという欲求です。

この二つは、似ているようで、実は少し違う方向を向いています。

本来、レベルが上がるほど求める球は明確になるはずです。
それは、ただ飛ぶ球ではなく、飛んで、しかも止まる球です。

グリーンを狙う以上、前へ行くだけでは足りません。
必要な距離を運び、しかも止められること。
本来はそこに価値があるはずです。

ところが実際には、上級者であっても、
低く強い弾道が打てそうなクラブ、
いかにも前へ行きそうなクラブを選びたくなることがあります。

もちろん、それ自体が悪いわけではありません。
ただ、その選択の中には、やはり飛距離欲求の強さが表れているように私は思います。

低く強い球は、見た目にも“飛んでいる感じ”がします。
着地してからも前へ行き、総距離も出やすい。
ですから、どうしても魅力的に見えます。

けれど、グリーンを狙うクラブとして考えたとき、本当に価値が高いのはそこなのか。
ここは一度立ち止まって考えたいところです。

そして、この価値観の変化には、時代背景もあると思います。

クラブの種類が少なかった時代は、難しいクラブで結果を出すこと自体に価値がありました。
難しい番手を打ちこなすこと、難しいクラブで球を操れること、それ自体が技術の証明であり、賞金にもつながった時代があったと思います。

しかし今は違います。
クラブの種類が増え、役割ごとに道具を選べるようになった。
そうなると、難しいクラブにこだわることよりも、結果が出るクラブで結果を出すことのほうが、より直接的に賞金につながります。

プロのこだわりがなくなったのではありません。

こだわる場所が変わってきたのです。

昔は、難しいクラブを使いこなすことに価値があった。
今は、スコアになる機能を持ったクラブを選ぶことに価値がある。
だから7Wや9W、あるいはショートウッドやHB的なセッティングが、ツアーの中でも自然に受け入れられてきているのだと思います。

店長として強く感じるのは、
グリーンを狙うクラブでは、ランで距離を稼ぐ球より、キャリーで必要距離を運べる球のほうが価値が高い
ということです。

アマチュアはどうしても、低く強く出て、着地してからも前へ行く球に魅力を感じやすいものです。
総距離だけ見れば、たしかにそのほうが飛んで見えることもあります。

しかし、上の番手で本当に必要なのは、しばしばそこではありません。

大切なのは、着弾点までを確実に運べることです。
その先のランは、助けになることもありますが、同時に不確定要素にもなります。
グリーンの硬さ、傾斜、風、落ちどころ。
ランに頼るほど、結果は読みづらくなります。

だから私は、グリーンを狙うクラブの理想的な弾道は、
ランよりキャリーの比重が大きい球
だと考えています。

高さが出る。
落下角が取れる。
必要な距離をキャリーで運べる。
そのほうが結果として狙いやすく、止めやすい。
だからツアーでは7Wや9Wが選ばれ、アマチュアでもHBや、場合によってはHBFWの意味が出てくるのだと思います。

そう考えると、7W・HB・アイアンの見方も整理しやすくなります。

高く上げて止めたいなら、7W寄りです。
長い距離でも高さが欲しい。
キャリー主体でグリーンを狙いたい。
そういう役割なら、7Wや9Wの意味は非常に大きいと思います。

高さも欲しいが、扱いやすさやつながりも重視したいなら、HB寄りです。
アイアンでは苦しい。
でもフェアウェイウッドほど長く大きいヘッドまでは要らない。
そういう番手を埋めるには、HBは非常に合理的です。

低さや形、操作感を優先するなら、アイアン寄りです。
ただし、その場合でも、その番手で本当にキャリーが足りているか、高さが出ているか、止められているかは、別に確認したほうがよいと思います。

結局のところ、7W・HB・アイアンの選び分けは、クラブの種類で決めるものではありません。

その番手に何をさせたいのか。
もっと言えば、
その番手で、飛ばしたいのか、止めたいのか。

そこがはっきりすると、選び方も見えてきます。

そしてアマチュアは、どうしても飛距離への欲求が強い。
だからこそ、ときどき立ち止まって考えたいのです。

そのクラブに求めているのは、本当に総距離なのか。
それとも、キャリーで運んで止めることなのか。

トップ側の番手ほど、スコアに効いてくるのは、むしろ後者ではないでしょうか。

飛んで止まる。
本来、上の番手で目指すべきなのはそこです。
にもかかわらず、私たちはつい“低く強い球が打てそうなクラブ”に惹かれる。
そのあたりに、クラブ選びの難しさと、飛距離欲求の根深さがあるのだと思います。

そして、この価値観の変化には、時代背景もあると思います。

クラブの種類が少なかった時代は、難しいクラブで結果を出すこと自体に価値がありました。難しい番手を打ちこなすこと、難しいクラブで球を操れること、それ自体が技術の証明であり、賞金にもつながった時代があったと思います。

しかし今は違います。クラブの種類が増え、役割ごとに道具を選べるようになった。そうなると、難しいクラブにこだわることよりも、結果が出るクラブで結果を出すことのほうが、より直接的に賞金につながります。

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納期情報

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ツアーインスパイアデザイン × 軽量プレミアムスタンドバッグ

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プロのこだわりがなくなったのではありません。
こだわる場所が変わってきたのです。

昔は、難しいクラブを使いこなすことに価値があった。
今は、スコアになる機能を持ったクラブを選ぶことに価値がある。
だから7Wや9W、あるいはショートウッドやHB的なセッティングが、ツアーの中でも自然に受け入れられてきているのだと思います。

問題は“何番を入れるか”ではなく、その番手が本当に仕事をしているか 第3話

ここまで見てくると、議論の中心は
「5番アイアンを抜くか、6番アイアンを抜くか」
という番手の数字そのものではなくなってきます。

本当に見るべきなのは、
その番手がコースでちゃんと仕事をしているかどうか
です。

たとえば、アイアンの長い番手や中間の番手で、

  • 思ったほど高さが出ない
  • キャリーが安定しない
  • グリーンで止まりにくい
  • ミスしたときの距離のブレが大きい

ということが起きているなら、その番手はバッグに入っていても、実戦では十分に機能していない可能性があります。

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